Goro Ito POSTLUDiUM

COMMENT

その木でできたボディのように、内にこもり共鳴する独白、と、外にむかいほかの楽器たちと交わす対話、と。伊藤ゴローの
ギターは、このアルバムでどちらかというと後者、それも対話の空気そのものをつくりだすところに。ある話題にはゆったりと、ある話題ではちょっと熱く。でも、いつだってみな低めの落ちついた声。ひとときの親しい人たちの対話を聴かせてもらう、小さなスペースでのトークショーのような。大きなコンサートのあと、リラックスして仲間だけで演奏しているのを垣間みたような。
そう、だから、「あと」の曲、後奏曲------POSTLUDIUM。

小沼純一(音楽・文化批評家)



簡潔でなければ表現できないものがある。
懐かしくも鮮やかで、悲しくも温かい。
創作への率直な意思を感じ、胸が熱くなった。

菊地敦己(アートディレクター)



ゴローさんが作る豊かな音の積み重なりは人間の想像力を無限に開放してくれるかのようだ。
ちょうどそれは人間が「空」に対して抱いてきた根源的な意識、感覚とおなじ。
去年夏に青森県美で開催した「Art and Air」展でゴローさんに「展覧会のサントラ」という一風変わったお願いをしたのもそのためである。果たして、その6曲のサントラは人が「空を飛ぶ」ことの意味を見事に象徴化していた。
今回のアルバムにも数曲アレンジを変えて収録されているが、精緻さと繊細さがより深みを増し、僕の心をさらなる高みへと飛翔させてくれる。

工藤健志(青森県立美術館学芸員)



『森の音楽』。僕は勝手にそう呼んで、このアルバムをくり返しくり返し聴いている。
樹や草花の精霊、小さなムシたちの囁きや風の息吹に満ちあふれた森に彷徨いこむと、
きっとこんな音楽が聞こえてくるに違いない。
この音楽に「ヒーリング」とか「癒し」というような甘ったるい言葉は似合わない。
僕の魂を「浄化」してくれるような音楽を贈ってくれたゴローくん、ありがとう。サイコー!

宮田茂樹(音楽プロデューサー)



『POSTLUDIUM』は、美しい書体のような音で編まれた詩集だ、と感じる。凛とした音の響きは漢字で、たおやかな音の響きはひらがな。どちらも一音一音が濃密で、それでいて優美なハーモニーを生み出している。そして音楽にとっての残響や沈黙と同じく、「余白」が美しい。しんとした雪景色をイメージさせるその余白には、温もりが感じられる。雪景色と温もりは、決して矛盾しない。伊藤ゴロー氏のような雪国育ちの人なら、きっと頷いてくれるに違いない。 昨年の12月以来、僕はこのアルバムを何回も繰り返して聴いている。時間帯としては、深夜より早朝に聴くことの方が多い。まだ暗い冬の朝、コーヒーを淹れながら、この音楽を小さな音量でスピーカーから流していると、きりっとした空気がやわらいでいく。コーヒーポットから立ち上る湯気と相まって少しずつ。こんな風に『POSTLUDIUM』を聴いていたある時、ふと思った。夜明けは、「前奏曲」ではなく、「後奏曲」なのだ、と。夜明けは一日の始まりではなく、日没から始まる一日の終わり。そうだとするなら、このアルバムは、まさしく夜明けにふさわしい。『POSTLUDIUM』は単に静謐で洗練されたアルバムではなく、ここには夜のざわめきと孤独が封じ込まれている。深い夜を孕んだ雪景色のような『後奏曲集(POSTLUDIUM)』。だからこそ物狂おしく、切なく、官能的なまでに麗しい。

渡辺亨(音楽評論家)




五十音順 敬称略

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